▽ story ▽

□“光の国の物語 T”
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chapter.01
重なる視線


“エルナ!!”

呼ばれて‥ガバリッ!‥とベットの上で飛び起きた。

自分の部屋、自分のベットの上。

「まただ…」

また誰かが私を呼んでいる。
姿は見えない。
何故呼ばれているのかも分からない。

確信している事。

それは夢ではない事。

呼び掛けの声に気付いた時、それは月に一度だった。
次第にその頻度が増し、一週間に一度になり、四日に一度、今では二日に一度は必ずこの呼び掛けで目が覚めてしまう。

そして‥その呼び掛ける声も次第に苦しさを増した様に感じられる。
それは、苦しく…助けを求めているかの様に‥。

私は何とも言い表わせられない気持ちで、学校へ行く支度を始めた。


私の名前は、月花エルナ(ゲッカ エルナ)。17歳で高校2年生。
自分で言うのは何だけど、運動神経と五感の良さは、誰にも負けない自信がある。
特に五感は異様に良いらしい。

だからなのかな?
あの変な声が聞こえてしまうのは‥。

でも毎日の様に呼び掛けられていると、何かあるんじゃないかと不安になってしまう。

「おはよー!エルナー!」
教室に入るなり、同じクラスの親友の優子が近づいてきた。
「おはよ、優子!どうしたの?」
「朝の恒例行事!付き合って〜」

優子の言う“恒例行事”とは、彼女の好きな人を見に行く事なのだが…

「えー!!朝っぱらから、あんな歩きたくないよー!」
‥と言う程、教室が離れているのです。
ちなみに私は2年G組。
優子の好きな人は2年A組。
長〜い廊下の端と端。
歩くと結構な距離だし、端と端にちゃんと階段が付いているので、普段は用事がなければあまり近づく事のない教室なのだけれど…。

「お願い!だって里加にも断られちゃって!私、森下くんを見ないと一日が始まらないんだよー!」
泣き真似までして懇願されて困り果てて視線を巡らせると、
離れた席でもう一人の親友里加が、目で語る。
『昨日は私が付き合ったんだから、今日はあんたが犠牲になんなさい。』
と言っている。

私は諦めて付き合う事にした。

この日のここ迄で、私の生活は普段と別段変わりはなかった。

A組の廊下に着き、優子が“森下くん”を覗いている。

私はある方に視線をやった。

何故、そっちを向いたのか
何故、そのタイミングだったのか
私には分からなかった。
ただ、また呼ばれた気がしたのだ。
ただ、何も考えずに、
ただ、視線をやっただけ。

すると、同じタイミングで振り返った男子がいた。
一寸のズレもなく同じタイミングで‥。

視線が絡んだ…。

私と彼の間に、一瞬花火みたいな光が散った。

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