▽ story ▽

□“光の国の物語 T”
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chapter.02
再会


「エルナ?」
肩を揺さぶられた。
「エルナ、もう戻らないと朝のHR始まるから行こう?」

どの位の時間がたったのだろう?
私は優子に肩を揺さぶられるまで、視線の先の男子と目を合わせたまま、不思議な光の中にいた。

「どうかしたの?エルナ・・・大丈夫?」
しばらく現実に戻ってこれなくて優子に心配させてしまった。
「あ、うん。大丈夫、大丈夫!ちょっとボーっとしてた、ごめん!」
私がいつもの調子で元気に言うと、少し変な顔をした優子は「ならいいけど」と首をかしげた。
すると、校内にベルの音が鳴り響いた。
「あ!エルナ、ベル鳴っちゃったよ!急ごう〜!」
と、優子は先に走り出した。

私は先に走る優子を追いかけようと走り出したけれど、まだ背中に残る視線に、もう1度だけ振り返った。
その時には、もう視線を感じることは出来ず、あの男子もどこにいるのか分からなかった。

そして、不思議な光はもう何処にもなかった。


教室に戻ると、ラッキーな事に担任はまだ来ていなかった。自分の席に着くと、前の席の優子が振り向いた。
「ごめんね、エルナ。付き合わせといて先に走っちゃって、本当にごめん!」
と、すまなそうな顔をして謝ってきた。
「気にしないでよ〜、私がボーっとしてたんだし(笑)」
「でも、エルナ・・・本当にあの時ただボーっとしてただけなの? 何かあったんじゃないの?」
と優子が言い出した時、教室の前のドアが開き、担任の三杉が入ってきた。
「優子、三杉ちゃん来たよ!」
前向かなきゃ!と促すと、優子は慌てて前を向いた。

三杉ちゃんがタイミング良く来てくれて良かった。
私は出来れば誰にもあの時の話はしたくなかった。
きっと誰に言ったって、変に思われるだけだろうし・・・。

その日、何度か優子にその事を聞かれたけれど、私はあの男子の事も、不思議な光の事も何とか話を逸らして黙っていた。

帰りに優子と里加と3人で寄り道をした。家は2人とは別の方向なので、私は最後1人になる。
私は家の近くの公園が好きで、その日もまだ暗くなる前だったので公園の中間にあるお気に入りのベンチに座って、夕日を眺めながら今日起きた事をぼんやり考えていた。

すると公園の前の道を走っている男の人に目がいった。
その人もこっちを見た。
目が合った。
ビックリした!!

その人は・・・朝2-Aで目が合った、あの男子だったから。
でも、今回は目が合っても不思議な光は見えなかった。
やっぱりあの光は私が本当にボーっとしてて何か幻覚を見たのだと、そう思おうとした時だった。

「あんた何者なんだ?」

いつの間にか彼は、目の前に立っていた。

あんた何者なんだ?って彼が私に聞いた。

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