▽ story ▽

□“光の国の物語 T”
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chapter.03
アキト


「何者なんだ?て、2-Gの月花エルナよ。」

何でか緊張して答えた。

「・・・人間・・・だよな?」

彼は不安そうに聞いてきた。

「はぁ?!何言っているの?当たり前じゃない!!
 何なのよ、何でそんな事言うのよ?」

どこをどう見たら、私は人間以外の生物に見えると言うのだ?
一気に変な緊張が解けた。

「イヤ・・・、あの、今朝お前と目が合った時・・・、朝のお前だよなぁ?」

私の心臓は周りに聞こえるんじゃないかってくらい、五月蝿く脈を打ち始めた。

彼は何を言い出すんだろうか?
いや、私には分かっていたんだ。

「そう、あの時‥目が合ったよね。」
「お前、あの時・・・目が合った時、何か光を見なかったか?」

すごく真剣な顔で彼は私が思っていた事を口に出した。
彼はあれを見ていて、真剣に私に確かめているのだ。
私も答えを知りたい。

「・・・あれは、現実なの?」

私の言葉で彼の両目が見開かれた。
きっと私も同じ顔をしている。

「やっぱりお前も見たんだな・・・」

自分の勘違いであって欲しかったと、ため息を吐きながら彼は言った。

彼はため息をつきながら、私の隣に座った。
2人して暫く放心状態だった。
そのうち彼は、自分が名乗ってなかった事に気付いて、

「如月アキト」
と、名乗った。
そして、あの光を見た後、親しい友人に同じ光が見えたか何気なく聞いてみた事を話してくれた。

「何 寝呆けてんだ?って言われたよ。」

やっぱり周りの人には見えてなかったらしい。
あれだけの光だ、目を開けていた人なら何処を見ていたって気付くはず。

やっぱり見えていたのは、私とアキト君だけだったんだ。
「何なんだろう・・・?」
私は1人言の様に呟いていた。
アキト君はそれには何も言わず、真剣な顔をしていた。何かを考えているんだろう。

私は自分の錯覚ではなかった事が証明されると、無性に怖くなってしまった。
不思議な光を見て、不思議な声を聞いて、いったい自分の身に何が起こっているのか・・・分からない事が怖いのだ。
ここだけの話、私はUFOや異星人の存在を実は信じている。(馬鹿にされそうなので、誰にも言えないけど・・・。)

私の瞳に知らず涙が溢れ出すと、アキト君がそれに気付いて慌てた。
「お、おい!泣くなよ月花!」
と、真剣だった顔が崩れる。
「だって・・・」
私が弱音をぶちまけそうになった時、

“エルナ”

と、いつも心に呼びかける声がした。

“アキト”

と同じ声で続く。

私は“ハッ”として顔を上げる。
そこには強張ったアキト君の顔があった。

「今の声・・・」
私はやっとの事でそれだけ言葉にした。
「月花にも聞えるんだな、あの声・・・」

“ごくり”とアキト君の喉が鳴った。

「アキト君もあの声に呼ばれるの?」
「あぁ、周りの奴には聞えないんだとよ・・・」
「私も同じ・・・」

私達は、それきり口を開かずに暗くなるまで、ただ沈んでゆく夕日を眺めてベンチに座っていた。

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