▽ story ▽

□“光の国の物語 T”
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chapter.06
2人の願い


“助けて―!!”
悲鳴にも似た叫びが2人に届いた。
2人が繋いでいる手からは、今まで見た事のないような明るく、眩しい光が溢れ出している。

“早く・・・助け・・て・・・”
声がだんだん小さくなる。
エルナは耐え切れなくなって、
「アキト!助けに行こう!!」
と、口にしていた。
「エルナ・・、どうやって助けになんか行くんだよ?この声の主が誰か、何処で叫んでるのかさえ、分からないんだぞ?!」
アキトが少し声を荒げた。
あんな声を聞いてしまったら『助けなくては!』と自然に思う。
「そうだよね、・・・いったいどうしたら・・・。
 あっ!!そうだよ!」
私は閃いて少し声を大きくした。
「なっ、何だよ、エルナ?」
アキトは少し驚いた。
「心で願えばいいんだよ!2人で!!」
さっきは心で願うだけで、目の前のケモノが消え、エルナの傷も治った。
「そうか、そうだよな!
 2人で強く願えば・・・あるいは本当に・・・。よし、エルナ手を!」
「うん!」
2人は手を強く繋ぎ、心の底から願った。

『助けたい!助けに行きたい!!』

すると、繋いだ手の中の光がさらに強くなり、アキトとエルナを包んだ。
しかし、それ以上の事は何も起こらない・・・。

ふと、エルナは足元に違和感を感じた。
「ア、アキト!2人の足首が光ってる!!」
2人のお互いの内側、足首が光を放っていた。
「もしかしたら・・・。」
アキトは言いながら、自分の足首とエルナの足首をくっつけた。
すると2人の全身はその光に包み込まれた。

「何?これ・・・、何??」
私は訳が分からず、アキトに横から抱きついた。
「分かんねーよ!おい!絶対に手と足を離すんじゃねーぞ!!」
「うんっ!」
エルナは、さらに強くアキトの手を握った。
「よし、もう一度強く願うんだ。
 助けに行きたいって!」
「分かった!!」

2人同時に願った。
さっきよりも強く、強く・・・!!
すると2人を包んでいた光が熱を持ち、一瞬とてつもない熱風が吹いた。
「熱い!」
知らずに口から漏れた言葉。
しかし、次の瞬間熱は冷め、それと同時に2人を包んでいた光も消えた。
2人が目を開くと、そこには見た事のない世界が広がっていたのだ。

ほんの数秒前にいた景色は、影すら残す事なく、目の前から消えていた。

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