▽ story ▽

□“光の国の物語 T”
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chapter.07
異世界-暗闇-


2人を包んでいた熱い光が消えた。
そろそろと目を開けると、そこには先程いた森とは違う景色が広がっていた。

「ここ・・、どこ?」
エルナはアキトの顔は見ず、握り締めている手に、ギュっと力を込めた。
よそ見してたら何かに襲われそうな、そんな危機感を感じる空気がする―――。

「分かんねぇ・・・けど、きっとあの声の主がいる所なんじゃねぇか?」
アキトは手を握り返したが、やはりエルナに目を向けなかった。
「そう・・だよね・・。」

「俺ら、本当に移動してきたんだな・・・、願うだけで。」
「うん。」
それ以上、何も言えなかった。返事が精一杯だった。
驚いてはいるし、信じられないけど、それは本当に起きてる事。自分の身に起きた事なのだ。

「とりあえず、誰か人を探そうよ!」
「そうだな。」
2人はようやく顔を見合わせた。

私達が立っている場所は、見渡す限り草原で、きっとその草原のど真ん中。周りには人影もなく、家が建っている気配すらない。

しかし、“何か”の気配を感じる。
“何か”が何なのか?
それは分からない。

「アキト!あれ見て!!」
エルナは遥か前方を指差しながら、叫んだ。
アキトは視線をエルナの指差す方向にむけた、
「何だありゃ?!」
見たアキトも驚く。

エルナの指差す方向・・・かなり距離はありそうだが・・・真っ暗闇のカタマリがあった。
上空には普通に青空が広がっているのに、そこだけぽっかりと黒い。
「アキト!あそこも!!」
「エルナ!あっちもだ!」
目を凝らして良く見ると、他にも何箇所か同じ様な暗闇が存在していた。小さいものから、まるで巨大なビルを隠すかの様な、大きなものまで。

「とにかく!あの暗闇には近づかないようにしよう?」
エルナの脳裏には、あの黒いケモノが浮かんでいた。
「そうだよな、またあんなバケモノが出てきたら洒落になんねーしな!」
どうやらアキトも同じ事を思っていたようだ。

2人は暗闇の空間を避け、前へ進んだ。
すると前方に、黒い闇に対抗するかの様に光を放つ建物を見付けた。

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