駄文
□Promised place
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ずっと一緒にいようって、約束したのに。
春。
ようやく暖かくなってきた風に舞う桜の花びら。
一枚がアッシュの緑色の髪の毛に張り付く。
「まったく・・六さんてば、また寝坊っすかね!!」
アッシュは時計を気にしながら、少し不機嫌そうにつぶやいた。
春が好き、桜が好きと言っていたあの人。
今日は、あなたに逢えた記念すべき日だから。
約束を交わした日だから。
「早く・・来ないかな」
早く、早く、あなたに逢いたいと思っていた。
「しまった・・寝過ごした・・またあいつ怒るだろうな;」
苦笑いを浮かべつつも、思い出されるのは愛しいあの子。
六は、待ち合わせ場所へと急いだ。
今日は、あの子に逢えた記念すべき日だから。
約束を交わした日だから。
一番に何て言おうか。
あの日の言葉を、誓いを、もう一度・・・・
ふと顔を上げると、一匹の犬が歩道から車道へと移動しているところだった。
「!!」
(あの、馬鹿犬!!)
犬は、猛スピードで走る車の前に飛び出そうとしている。
体が勝手に動いた。
全てがまるでスローモーションのように、ゆっくりと流れた。
瞼の裏に一瞬揺らいだのは、あの子の笑顔。