水鏡の空
□第一話
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今日は天気が良かったから、俺はアリルと外で紙飛行機を飛ばして遊んでいた。
アリルはおばあちゃんに作ってもらった新しい帽子をかぶって走り回っている。
「そうだお兄ちゃん、どっちが遠くまで飛ばせるか競争しようよ!」
「紙飛行機のプロと名高き俺に勝負を挑むか!OK、受けて立つ!」
「さっすがお兄ちゃん!じゃあアリルからいくよー!」
家の前の植木がスタート地点。
アリルが先攻、おおきく振りかぶって…
「えいっ!」
アリルの紙飛行機は、海からのおだやかな風に乗ってやや右のほうにそれながらも、結構遠くまで飛んだ。
「橋のちょっと前だー♪アリルの最高記録だよ!お兄ちゃんは戦わずして負けっ!」
着地地点に石で目印をつけ、アリルが戻ってくる。
「ふっ…俺の紙飛行機にとってそんな距離、恐れるに足らず!」
俺も植木の前にスタンバイ。
「俺のスーパーハイパードラゴンフライを…見ろ!!!」
投げる構えをし、走りだす。
「あっお兄ちゃん!走るの反則だよっ」
「これは助走だからいいのっ!」
ブンッ
おもいっきり投げてやった。
俺の紙飛行機は海からの風を…
受けずにへろへろ落ちていってる!?
「あははwお兄ちゃんがフセイを働いたから風が止んじゃったねー♪」
アリルの楽しそうな声が聞こえる。
うはぁ…かっこ悪い。
俺の紙飛行機は風を受けることなくよろよろと滑空し、地面に着きそうになった。
…その時。
ひゅおぉおおおおお!
「「うわっ!?」」
突然海から突風が吹いた。
その風に乗って、俺の紙飛行機は勢い良く飛び上がり…
というより飛ばされていってしまった。
「よし、行けっドラゴンフライ!」
「お兄ちゃん、ドラゴンフライってトンボだよね…」
「カッコいいからいいじゃないかっ///」
俺のドラゴンフライは、森のほうまで飛んでいってしまった。
*****
突風は止まず、強風と化した。
海は白く波立ち、砂が舞い始めたので他の人たちが家に戻り始めた。
おばあちゃんもその様子を見て、俺達に戻るよう言いに来た。
「リンク、アリル!危ないから家に入りなさい!」
あーあ、俺のドラゴンフライがどこまで行ったか確認したかったのに…
危ないなら仕方ないか。
「アリル、危ないから戻ろう。」
「うん…」
渋々家に向かって歩き出すと
また突風が吹いた。
「きゃあっ」
その突風でアリルの帽子が島の上の森の方へ飛ばされてしまった。
「アリルの帽子が!アリルの帽子がっ!!」
「帽子ならまた作ってあげるから…戻るんだよ、アリル」
「おばあちゃん…でもっ、でもっ…」
よほど気に入っていたのだろう、泣き始めてしまった。
「…兄ちゃんが取ってきてやるから、戻るんだアリル。」
「ぐすっ…ほんとうに?」
「本当だよ、だから。」
俺は帽子が飛んでいった森まで走りだした。
「リンク、待ちなさい!」
ばあちゃんが俺を止める声は、強風のせいで耳に届かなかったことにした。