水鏡の空

□第一話
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俺は坂を上り、
[危険!良い子は壊れた橋を渡らない!]
と書かれた看板を無視して吊り橋を渡りはじめた。

「壊れてるって言ったって、真ん中がちょっと抜けてるだけだし。俺もうすぐ12だし!お子様違うわぁっ!」

走って渡ると振動で橋が揺れる。
しかも今日は強風でもっと揺れる。
でも雨で濡れているわけではなかったから、俺は足を滑らせることなく渡りきった。



*****


森に入り、アリルの帽子を探す。
思いつく限りの場所を探したが、上にも下にも見当たらない。

「もしかして、森を通り越して海に落ちちゃったんじゃ…」

いやいや、諦めるな俺。
もしかしたらもっと奥にあるかもしれないじゃないか!
風の方向はさっきから変わっていないから、風の向かう方向へ進めばきっと…



俺は普段行かない森の奥へ、風を頼りに道なき道を進んでいった。

途中、大人たちが前に
[この森には怖いお化けがいて、森の奥に入った子供をさらってしまう]
という話をしていたのが頭をよぎる。

奥へ向かうほど薄暗く、道がわからなくなりそうな森。
本当にお化けがいそうな…

「…っ、お化けなんか信じてるのかよ俺!男なら怖くないだろ!」

俺は自分を励ましながら進んでいった。



*****


しばらく進むと、急にひらけた場所に出た。
戻ってきてしまったのかと思ったが、見たことのない所だった。


帽子がないか見回すと、近くに大きな鏡があるのに気がついた。

「うわぁ…でかい鏡。」

大人一人余裕で通れそうなくらい大きい。
近所の家でもこんなに大きな鏡は見たことがないな…


「にしても、森の中にこんな鏡があるなんてな」

まじまじと鏡を見上げる。
すると突然

「あのー、すみません…」

どこからか声が聞こえてきた。

「うわっ!どこから声が?まさか出るって噂の…!」

大人たちの話は本当だったんだ!どうしよう、俺は攫われるのか?食われるのか?
うわぁぁぁぁ?!


「驚かせてごめんなさい、目の前にいますよ。えっと、鏡の中です。」

申し訳なさそうな声が鏡から聞こえる。
しかし鏡には自分の姿しか映っていない。
やっぱりお化けかも…
でも話は通じそうな感じだから、大丈夫かもしれない。

「?俺しか映ってないけど…誰かいるの?」
「さっきからいますよ^^ところで、あなたは…?」
「俺?俺はリンク。キミは?」
「私は…」

条件反射で名乗ってしまった。
もしお化けだったらヤバイのか?!
私は…お化けです。とか言われたら俺どうしたらいいんだろう。

「えーと…その、名前がわからないの;」
「え、自分の名前忘れちゃったの?」
「まぁ、そんな感じかな。」
「そっか…じゃあなんて呼んだらいいんだろう。」

襲いかかってくる様子もないし、これはいいお化け(?)なのかもしれない。
でもお化けさんは失礼だよなぁ…
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