水鏡の空
□第一話
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名前…
…そうだ。
「…ミラー。」
「え?」
「ミラーって呼んでもいい?」
ミラーはうれしそうに笑った。
気に入ってもらえたなら良かった…
「うん!ありがとう!」
「へへっw で、それよりも…」
「ん?」
「なんで君は鏡の中に?」
そう、これが一番わからない。
森の中にあったこの鏡は置いといて、なんで鏡の中にいるのか…
しかしその答えは。
「実は…それもわからないの」
「そっかぁ…」
そうだよな、名前を覚えてないならわからない可能性だってあるんだったな…
「気がついたら真っ暗なところにいて…」
「真っ暗なところ?」
「うん。見渡すかぎりずーっと闇で、風も音も…なんにもないところにいたの。」
ミラーは覚えている部分だと思われることを話し始めた。
気がついたら風も音もない闇の中にいたなんて。
俺だったら怖くてなんにもできないだろうなぁ…
俺は風が吹いてたからあまり迷わずにここに来れたけど、ミラーがいた闇の中には風が吹いてなかった…
どんなに心細かっただろうか。
「…諦めかけたとき、風が吹いたの。」
「風…」
「うん。本当に一瞬だったけど、真後ろから風が吹いたの。それを信じて走っていったら…ここに出たというわけです。」
風…さっきの強風かな。
そういえばこの鏡に丁度あたる方角に強く吹いてたし。
「なるほど…俺はアリルと遊んでたら、すごい風が吹いてアリルの帽子が島の上の森まで飛んでっちゃったから風を頼りに捜しに来たんだ。
いつもこの森には遊びに来てるから、どこに何があるとかは把握してるつもりだったんだけど…こんなところがあったのは知らなかったなぁ」
改めて鏡とその周りをまじまじと見る。
本当に、変なところだなぁ…
「まぁ、ここであったのも何かの縁!
これからよろしくな!ミラー!」
「こちらこそ!よろしくね、リンクくん!」
「俺のことは呼び捨てでいいから!」
「…うん! リンク!」
森の奥で、俺は鏡と友達になった。