幻水
□手を繋ぐ
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いつ眠ったか定かではない。只、隣で静かに聞こえる寝息は嫌いではなかった。
手を、繋ぐ
うっすらと視界が開ける。と言う生甘い感覚をこの身体は経験した事がない。もしくは忘れてしまったか。
そう。目覚めの瞬間は至ってあっけない。
しかし、情事の後の身体は流石にダルくどうやっても無理に動く気にはなれなくて。
なんとなく腹立たしくなり、紛れに隣で寝入る子供の頭に自分の下にあった枕を叩き込んだ。
「んぐっ……」
もふっ……と柔い音(しかし自然落下と遠心力のコラボレーション。ダメージはけして小さくはなかろう)とその下から安眠を見事な形で中断された、どこか幼さを残した声。
決して満足した訳ではなかったが、枕を除けてやるとやや恨めしそうに海色がこちらを向く。
強い真っ直ぐな光も今は霞がかり。
「いい夢みてたのに……」
そう言いながら身じろいで、自分の横に投げ出された彼の手。
キカが何か言う前に再び海色が閉じていく。
再び響く、寝息。
、