幻水
□吐露
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二人だけで話がしたい。
少し困った笑みを浮かべて彼はそう言った。
吐露
部屋の奥に消えていく背中。話したいことは山ほどあるだろう。察した仲間は一旦宿へと引き返していく。
一時とは言え、折角海賊島に戻って来たのだ。キカはパブの一席に腰掛け、グラスに浮いた氷を眺めていた。
「何故、あなただけ生きているのよ!」
「僕だって!」
不意に耳に届いた声。
理不尽さを嘆くかのような抗議。刹那、それを遮った子供の声に思わず目を見張った。
悲痛を持った震えの混じるそれに堅く目を閉じる。
「いつ……団長のようになるか…」
そうして再び小さくなる声。暫くの時間の後、出てきたのは匿っていた女。
かみ合う視線。
瞼を微かに伏せるようにして、女性が頭を下げた。
対して、自分は頷いて。
無言の会話が終わると彼女は(言うまでもない、アスタリスクに)去っていく。
、