幻水

□吐露
1ページ/4ページ


二人だけで話がしたい。
少し困った笑みを浮かべて彼はそう言った。

吐露

部屋の奥に消えていく背中。話したいことは山ほどあるだろう。察した仲間は一旦宿へと引き返していく。

一時とは言え、折角海賊島に戻って来たのだ。キカはパブの一席に腰掛け、グラスに浮いた氷を眺めていた。

「何故、あなただけ生きているのよ!」

「僕だって!」

不意に耳に届いた声。
理不尽さを嘆くかのような抗議。刹那、それを遮った子供の声に思わず目を見張った。

悲痛を持った震えの混じるそれに堅く目を閉じる。

「いつ……団長のようになるか…」

そうして再び小さくなる声。暫くの時間の後、出てきたのは匿っていた女。

かみ合う視線。
瞼を微かに伏せるようにして、女性が頭を下げた。

対して、自分は頷いて。
無言の会話が終わると彼女は(言うまでもない、アスタリスクに)去っていく。


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ