幻水

□★大きな木
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確認して安心したのかふんわりと和やかに月明かりを受ける双眸にしばしの間、魅入る。

「おーじさん……?」

「そっち、行ってもいいかな」

プカプカと浮いている王子の足元から白い影が浮かぶ。どうやらセラス湖の先住者に此処に運んで来て貰った様だ。

こうして木の根本まで近づいてきたセラフィーシュを(自然と)ロイは見下ろした。

「なんだよ、アンタも眠れなかったのか」

「も、って君も?」

「……わりぃかよ」

肯定してしまった自分が口惜しくて、ふいと顔ごと背ければ「ごめん」とどこか苦笑混じりの声が聞こえる。

「木の上って涼しい?」

「ん〜まぁ、それなりに……って」


問いに対して答えようと視線を降ろすと、手頃な枝の付け根にセラフィーシュが手を掛けていて。
一方のセラフィーシュは半端に止まったロイの台詞に何だろうと彼を見た。

「アンタ、なにしてんの」

「え、だからそっち行ってもいいかなって」

「王子さん、木登りしたことあんのか?」

「ん〜、大分前に。父上と」

大分前、とは一体どれほど前だ。

経験がある、と言われてもやっぱり不安で結局自分が王子を引き上げてやった。

「ありがとう」

すぐ隣で自分と酷似した顔立ちがやんわりと微笑んだ。酷似、と言っても育ちから来る雰囲気はまるで違う。

気高く、どこか暖かい。
近寄り堅さがまるでなく、人々が自然と集まってくる。
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