幻水
□呪われた英雄
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眠っているようだ。
誰かははっきりと意識しなかった。だが、誰かがそう呟いた。
確かに命半ばに死んだ人間の顔ではなかった。目や口が開いている訳でもなく、安らかに眠るように
閉じられた蒼の瞳。
リノは固く口を結んだ。
妻を失った時の無力感に近い想いが胸中に激しく渦巻く。
どうにかしてやる事は叶わない。
わかってはいた。それでも
「……畜生」
長いと思われる静寂の後、誰かが流してやろう、と呟いた。
矢張り、誰がそう言ったのかリノにはわからなかった。
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