‥◆ BLEACH SIDE ◆‥

□月鬼夜行 【一角x弓親】
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 静寂に染まる夜。闇の中で月だけがその存在を主張する。


「なんで行くことにしたんだ?」
「だって面白いそうじゃない。上位席官になると現世なんてそう行けるものじゃないし」

 現世へ行く準備―――と言っても旅行へ行くわけでもなし、義骸の調整くらいしかないが、それさえも技術開発局任せである―――を終え、落ち着かず修練場の屋根へ上がってみると、そこには先客がいた。斬魄刀と並んでごろりと足を投げだし横になり、白く浮かぶ月を眺めていた。
 淡い光に照らされた頭部がそれとよく似て見えたことは黙っておく。

「それだけか?」
「他に何が?」
「まぁいいか。上位席官といえば、いつまで五席にいるつもりだ?」

 屋根の端ぎりぎりに腰掛け緩やかに揺れていた足が一瞬ぴたりと止まる。が、すぐにまた揺れだし、そのまま斜め後方に笑顔が向いた。

「久しぶりだね、その質問」
「いい加減、答えろよ」
「言ってるじゃないか、四席は背負えないって」

 何度目か分からない質問に、同じく何度目か分からない答えを返す。そしてまた納得がいかずに毎度お馴染みの言葉が返された。

「答えになってねえよ。今の十一番隊で他に誰が四席に就ける。―――何を隠してる」
「何も隠してないよ」

 持ち前の鋭い勘がそうさせるのか。探るように見る目が全てを透かしそうな気がして、ゆっくりと視線を外した。
 四の字が美しくないから。
 四席に就かない理由をそう話したところで、この男は怪訝な顔をするだけだろう。四席への昇進を断った時と同じ顔をまた見ることになる。自分が五席にいることの何が気に入らないのか、そちらの方が余程解らないと思った。
 暫く続いた沈黙を破ったのは、微かな衣擦れの音と間合いを取る気配。
 そして、声。

「構えな、弓親」

 
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