‥◆ BLEACH SIDE ◆‥

□願い、朧形成 【修兵+弓親】
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「なんだこれ?」


 慣れない隊長代理業務で遅々として進まぬ作業に嫌気がさし、少しでも気分転換になればと外に出た檜佐木修兵が隊舎の脇を通り掛かった時、そこには昨日までとは違う光景があった。
 あまりの仕事の煮詰まり具合に、遂には幻覚でも見えてしまったかと一度きつく目を閉じ見直したが、やはりそれはそこにある。
 隊舎に寄り添うように青々と茂ったそれは檜佐木の身の丈より少し高く、所々に白いものが混ざり揺れている。見たところ危険なものではなさそうだが、今日突然現れたということ自体が明らかに不審である。
 風を受けるそれを訝し気に見上げた。

 笹……か?一日でこんなでかいのが生えるものだったか?

 檜佐木は知る限りの情報―――と言っても植物に関するものなど高が知れているが―――を動員してみたものの、そんな異常発育をする品種は思い当たらなかった。とすると、技術開発局がまた何か妙なものでも作ったのだろうか。
 十二番隊管轄の技術開発局はその優れた技術力によって義骸を始め数々の霊具・武具を生み出しているが、時々明らかに趣味としか言えない代物を作っては、使うかも分からないような怪しげなデータを採っている。しかもその実験体に隊員を使っているという噂まで聞くが、真偽のほどは定かではない。しかしあの局長なら然もありなんといったところだろうか。
 これも何かの実験なのか?
 作り物ではなさそうな葉を指先で摘んでみる。

「何をぶつぶつ言ってるのさ」
「ぬおっ!!?」

 突然、目の前の笹らしきものに話しかけられ、思わず檜佐木は一歩後退った。

「ちょっと、そんなに驚かなくても、って…」

 話しかけてきたのは笹らしきものではなかった。緑の中から出てきた影は呆れたように檜佐木の手元を見ている。気付いた檜佐木は、つられて視線をずらした。
 視線の先には斬魄刀の柄をしっかり握った手。鞘から五尺ほど覗いた刃がちかりと光っていた。

 
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