‥◆ BLEACH SIDE ◆‥

□死神と想 【一角x弓親←修兵】
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 仕事が終わるのを見計らって現れた阿散井からの酒の誘い。檜佐木に断る理由はなかった。片付けた仕事が多い程、その後の酒は旨い。

 軽くなった徳利がだいぶ増えた頃。
 どんな話の流れだったか、そもそも流れがあったのかも定かではない。
 自覚がないだけで、だいぶ酔いが回ったのだろう。話の中でついうっかり檜佐木の口をついた名前を、阿散井は聞き逃さず反応した。

「弓親さんが好きなのって―――」
「知ってるよ」
「そっすよね」

 今更言われるまでもなく、それは周知の事実だ。それでも誰と名指ししなかったのは、この男なりの配慮か。
 檜佐木は手にした酒を一気に煽った。喉に焼けるような熱が走り、それはそのまま胃に落ちていった。
 空になった猪口を見つめる。

「別にどうこうしたいわけじゃないからな」
「すればいいじゃないっすか、どうこう」

 簡単に言ってくれる。
 もしかしたら、など有り得ないのに。

「出来るわけ…」
「引くことがカッコイイ、なんて思ってんじゃないでしょうね?」

 阿散井の目が鋭くなった。
 言いたいことはよく分かる。だから檜佐木はその先を断ち切るように目を逸らした。

 手にした空の猪口の中に、過去が甦る。

 初めて会った時のことを思い出した。
 共に院生だったあの時はまだ髪が長かったか。
 袴の色に気付かない程に、その黒く長い髪と整った顔に目を奪われた。
 綾瀬川弓親。
 名を知ったのは、確かだいぶ後のことだ。

「―――引ければもっと楽なんだろうけどな」

 徳利を持ち上げると、もう殆ど入っていなかった。その少ない中身を檜佐木は自分の猪口にあける。

「あいつはやらねぇぞ」

 
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