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□前編
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その日は、家に帰ってからも信じられなかった。
山田くんにキレイって言われたんだ…。
「キャー! キャー! イヤー! どーーしよーーー!?」
ベッドで転がりながら悲鳴をあげてると、ドアがバンと開いた。
「ゆいどうしたの!!!!」
入ってきたのはおたま持ったお母さんだった。
「は!? ちょっとなに勝手に入ってきてんのよ!」
「あんたが急に大声出すからビックリしちゃったんじゃないの!」
親子で口喧嘩してると、裕翔が帰ってきた。
「ただいまー」
「あら、おかえり」
「…母さん…おたま持ってなにしてんの……しかもカレー垂れてるし」
「え、あら! あらやだわぁもう。ゆいのせいよ」
グチグチ言いながら床を拭くお母さんをシカトして、あたしは裕翔のもとへ急いだ。
「裕翔裕翔裕翔裕翔!」
部屋に入ろうとしているところを、叫びながらドアをこじ開けた。
「うわっ! なに!?」
「山田くん。今日どうだった? なんか言ってた?」
裕翔はしばらく考えたあと、「ううん」と首を横に振った。
「えぇー…?」
「だって今日プールでの撮影だったし。くくっ、ゆい姉ちゃん遊びに負けたね」
あたしが遊びに負けたことがそんなにおかしいのか、裕翔はケラケラ笑った。