short story

□ファーストキス
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「……んでさーそん時知念が…」

伊野尾くんがそこまで言ったとき、やっと玄関のドアが開いた。

「ゆいちゃん! 準備でき……」
「あっ侑李おっそい!!」
「ちねーん、ダメじゃん彼女こんなに待たせちゃ…」

すると侑李は、スタスタ歩いてきて、あたしの腕を強く引っ張った。

「ごめん、ありがとね」

と、ぶっきらぼうに伊野尾くんに言って、家の中に入れた。

「伊野尾くんごめんね! ありが…」

そこまでで、ドアが閉まって伊野尾くんは見えなくなった。
門の向こうでポツンとしてた伊野尾くん…。
頭の上に『?』がたくさん浮いてた!
なんて可哀相なことを!

「ねぇ侑李ぃ。さっきからなに怒ってんの?」


――で、今に至る。

「…ってことしてたじゃんかぁ!」
「えぇ、そんなこと?」
「そっ…そんなこともこんなこともないよっ!!」

なーんか…怒ってる侑李もカワイイ!
ヤキモチってやつ?

「分かった分かった。ごめんね?」
「やだ!」
「えぇっ! お願い! この通り! ね、許して?」

あたしは顔の前で手を合わせて見せた。
相変わらず膨れっ面ながら、侑李はこっちをチラッと見た。
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