long story

□Loved... 5
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大貴はあたしに合わせてくれてるみたいで、いつもよりゆっくり歩いてた。


「…ごめんね大貴、わざわざ…」
「いいよ。オレが送りたいだけだから」

大貴の声はまだ少し震えてて、泣きそうになるのを必死で堪えてるってことが分かった。








それからはずっと無言のままだった。
周りの幸せそうな声が嫌でも聞こえてくる…。




子供達が元気に遊んでる公園を通り過ぎると、あたしの家が見えてきた。



…誰かいる?











あの時の女の人だ……。

「ゆい? どうした?」
「…あの人……」
「え?」
「あの時の…」

そう言うと大貴も分かったみたいで、少しだけあたしより前に出た。

その女の人は、ゆっくりと近付いてきた…。

「慧は?」
「………」
「こっちの男に乗り換えたってこと?」
「…違う……」
「じゃあ答えなさいよ。慧は?」

言えない…。
怖い……思うように言葉が出ない…。

「やめろ」

そんなあたしの前に大貴が立ちはだかった。

「私はこの女と話してんの。カッコつけてないでどいてくんない?」
「カッコなんてつけてねぇし」
「大貴…いいよ……」
「よくねぇよ!」

女の人は、ぶっと吹き出した。

「あんたもブッてんじゃないわよ。こんな女選ぶなんてね…ホンット慧は…」
「ゆいのこと悪く言うな! 伊野ちゃんのことも!」
「私あんたみたいな男大ッ嫌いなの。無駄にカッコつけちゃって…」
「うるせぇ。大事なもん護って何が悪ぃんだよ!」

ちょっと待ってよ…。
大貴が悪く言われる理由なんてないじゃん…。

大貴のことは悪く言わないで…!

「慧はッ……!」

思わず叫んだ。
その女の人は、あたしを睨んだ。
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