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□【Ryosuke】
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今日もまた、彼から電話が掛かってくる。


あの着信音が鳴る。







一時の幸福…。














《ゆい?》
「…うん」
《…こんばんは、かな?》
「そうだね」
《今日は…なんかあった?》
「何にもないよ。いつも通り」

そう。いつも通り。
いつもと同じ朝。
いつもと同じ昼。
いつもと同じ――夜。


あたしの彼氏、山田涼介は、芸能活動のために東京に行ってしまった。
あたしは一人、北海道にいる。

唯一の接触はいつも必ず夜に掛けてきてくれる電話と、仕事の合間にくれるメールだけ。



いわゆる『遠距離恋愛』ってやつ。

だから、この夜の電話が1番の楽しみ。
このために一日生きてるって言っても過言じゃないくらい、あたしにとってかけがえのない大切なもの。



「ね、涼介」
《…ん?》
「東京は…星なんて見えないよね」
《そうだねぇ。街の明かりを星に見立てるくらいかな》
「北海道と東京どっちが好き?」
《そりゃ北海道だよ。今思えば空気も澄んでたし夜は満天の星空があったし……なにより…》
「…どしたの?」

受話器越しに、ふっと笑う声が聞こえた。
これは照れたりした時の笑い方だ。

《なによりゆいがいる》
「……涼介、今照れてるでしょ」
《てっ照れてないよ! 何言ってんだよ!》
「あははっ! 涼介かわい」
《かわいくない!!》
「でも……そんな涼介が大好きだよ」
《……ん。…も》
「へ?」
《だから! お…俺も》

いちいち照れちゃって。
やっぱかわいい。


でもね…涼介。
あたし電話もいいけど、やっぱ会いたいよ。
会って目を見て話したい。
会って涼介に触れたい。
会って……キスしたい。




 
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