short story

□あの日、あの時、公園で
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少し話してると、準備万端だったのにボールが投げられなくて怒ったじゃむとあんが寄ってきた。

「あー! カワイイ!」
「え、そう? うちの愛犬。じゃむとあんっての」
「へぇー!」
「そいえば……その…そっちの…」
「あ、篠嵜ゆいです」
「あぁ。えっとじゃあ…ゆいちゃん? …の犬とかは?」

俺は辺りを見回した。
だけど、近くに犬らしき影は見当たらない。
もちろん他の動物も。

…あ、まさか。

「うちのは……2年前に死んじゃったので」

……そのまさかだった。

「でもここでボール投げてればまたひょっこり帰ってくるんじゃないかなって……」
「…え…と…ご、ごめん」

悲しそうな、今にも泣きそうな顔をしたから咄嗟に謝った。

「あ、いえ、あの…ごめんなさい。変な空気になっちゃって…」
「いや……」
「……あ、あのっ、うちの犬も同じだったんです!」
「同じ? 何が?」
「種類!」
「え! マジで!? すっげ偶然じゃん!」
「そうなんです! だから見たときは一瞬ビックリしたんですよ!」

そうか…。そうなんだ。
同じか。
なんか…うれしい。

「また…会えたらいいなぁ」

彼女の言葉にドキッとした。
じゃむとあんを撫でながら言ってたから、多分2匹に言ったんだろうけど…。

俺にじゃない、俺にじゃない、俺にじゃない…。

なのに、鼓動は遅くはならなかった。
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