short story

□人だとしても
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次の日、僕は昨日家で調べた花のことを早く伝えたくて、学校へ急いだ。

教室のドアを開ける。

「おはようっ!」

元気な僕の声は、教室内のどんよりした空気にうるさく響いた。

「…ど…どうしたの…?」
「…花がグッチャグチャに踏みにじられてたんだよ。今日オレ1番に来たんだけど…その時にはもう…」

その子の言葉を聞きながら、みんなの視線の先に目をやると、そこにはシクラメンを悲しそうに撫でる君がいた。

こんな時、そばに行って一緒に撫でてあげたらいいのかな…。

だけど、他に誰一人そうする人が居なくて…結局僕も野次馬のようにみんなと混ざって眺めてることしかできなかった。

心の中で、『ごめんね』って何度も何度も謝った。




君にも、誰にも聞こえやしないのに。
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