short story

□Fighting
2ページ/5ページ















「おい!! まだまだ全然おっせーよ!」
「…ひぃっ…はぁ……はぁっ…! だ、って……何度目だと思ってんのっ!?」
「まだ3周目だろ! そんなんで勝てると思ってんのかよ!」
「はぁ…はぁ…だから…終わったと思ってって…言ったじゃん!!」

フラフラと、やっと光くんの足元までたどり着いて仰向けに倒れた。

「そんなんで本番大丈夫か?」
「はぁっ…はぁ…無…理……」

あたしの顔を覗き込んでくる光くんを直視できない。
グラウンドの照明も味方して、光くんの顔をさらに光らせる。



…ってシャレてる場合じゃないって!!

このままじゃあたし殺される!
疲れ果てて死んじゃう!!


「もうさ…あたし無理だから…ね。どうやったって走り切るのに1時間は掛かるよ……」
「…それが?」
「それが、って…そんなんじゃ勝てるはずないじゃん! なのにこんな練習…無意味だよ!」
「無意味だから…だからやんないってわけ? 言い訳が上手だねー」

光くんはニコニコ笑ってあたしを見た。
解放してくれる、のかな…?

あたしも光くんにつられて笑おうとした時








頭の真横の砂が跳び上がった。


光くんの手がグラウンドを叩いた証拠だった。



「俺がバカだった」
「……へ?」
「お前みたいな根性なしに本気になった俺がバカだったっつってんの。…もう俺知らないから。勝手にしなよ」
「………」



何も言い返せない。
根性なしなんて言われて怒れてるはずなのに。
見放されて悲しいはずなのに。



あたしはただ、光くんの背中を見てることしかできなかった…。











不意に、光くんはこっちを振り返ると「ゆい!」と叫んだ。

「……?」
「大事なのはさ…結果じゃないと思うけどな!」
「えぇ?」

光くんはまた背を向けて歩き出した。

大事なのは結果じゃない…。
じゃああたしが今頑張ってるのは…何のため――?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ