short story

□Fighting
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体育祭、か…。

はっきり言って、あたしは運動が大の苦手だ。


そんなあたしがリレーのアンカーに選ばれるなんて…。
それも『他に出れる人がいないから』って理由で。

…この世は意地悪にも程があるよ…。


室長や副室長、クラスメートからめちゃくちゃプレッシャー掛けられてて…失敗は許されない。

だから今日も練習。一人教室でバトンを渡されるイメージトレーニング。
…だけど……


「…はぁ…やっぱ無理だぁっ」

あたしにはアンカーなんて絶対無理に決まってるよ!
なんでよりによってあたしなわけ!?
もっと他に見込みのある人ぐらいいんでしょーが!
しかもアンカーなんて…1000m? 笑っちゃうね。無理無理!

なんでアンカーが一人でそんな長距離走らなきゃいけないんだっつーの!
この学校の体育祭はおかしい!

「もー! 知らない!!」

ふて腐れて椅子に乱暴に座った時だった。

ガラッ、と音がして、教室の扉が開いた。


「…ゆい? 何してんのこんな時間まで」
「え、あっ、光くん!」
「変な声出すねぇ、お前」
「ちっ違うよ! 急でビックリしただけだから!!」
「ふんふん。…んで? 何してたの?」

光くんは自分の机の上にカバンを置きながら言った。

「いや……」
「ん? 何?」
「リ…リレーの…練習」
「一人で?」
「だって! みんなだーれも居なくなっちゃうしさ、部活行ったりバイト行ったりのんきに遊びに行っちゃったりさ、しちゃうからさ、一人でやるしかないじゃん!? …あ『…うわ、寂しい女〜』とか思ってんでしょ!」
「いやいやいやいや思ってないよ!」
「あ、ていうか光くんこそ何してたの?」
「俺は部活。やっと今終わったとこ」
「ふーん……はーぁ。イメージだけじゃ練習にならないし…もう体育祭のリレーは終わったと思って。じゃあね」

諦めよう。リレーなんか。
別に負けても死ぬってわけじゃないし。
カバンを持って教室を出ようとした。
その時、「…ゆい」と呼び止められた。

「ん?」
「俺が特訓してやろーか」
「………はい??」

光くんは、八重歯を見せて不敵に笑った…。
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