long story

□Loved... 9
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「大貴、あのね…」

「ん?」
「大貴のこと狙ったの…あの女の人?」
「……なんで?」
「あの人と男の人達、捕まったんだって」
「え、マジで!?」

跳び起きようとした時、手足に激痛が走った。

「いっ…!?」
「ちょっと…! まだ動いちゃダメだって!」
「つ、捕まったって…?」
「その…現場を見たって人が居て、その人のおかげで…」

オレの肩に手を回しながら言う。

「そっ、か…そうなんだ」
「…? どしたの? 大丈夫?」


『捕まった』…。
これでオレらはもう安心。安全。
いやな影を見て怯える必要はなくなった。
ゆいのことを無意味に傷つける奴は居なくなった。














なんでこんなタイミングで…?

安心だね、って抱きしめらんねーじゃん。
やっと…伊野ちゃんを嫌でも思い出してしまうことがなくなったのに。

「…大貴…?」
「オレ…なんで生きてんの?」
「え?」
「……何もしてやれてない…」
「なん、で…? そんなことないよ? 大貴は…」
「死ねばよかったのに」




スッと口から出た言葉。
死。
たった一文字なはずなのに、言うのはすごく簡単なはずなのに、予想以上にオレの心にズッシリと重くのしかかった。

それと同時に、オレの中で何かが切れる音がした。

「あーあっ。オレも伊野ちゃんみたいにチヤホヤされてーなぁ! 死んじゃえば楽になるのになぁー!」
「…なん、で…? なんで…そんなこと言うの…?」

顔は見てないからわかんないけど、声が震えてるから泣いてるのかなってことは想像できた。

「伊野ちゃんはズルイ…オレ生きてたってなんも出来ねんだもん! なんだよ…みんなからチヤホヤされちゃってさ…死んだのに……死んだくせにっ!!」








ぺちっ


と音がした。

はっとしてゆいを見ると、手を押さえながら泣き縋るゆいが居た。


あぁそうか。オレ今、叩かれたんだ。


「…そんなふうに言わないで…死んだくせになんて言い方しないでっ!! 慧の何を見てきたの!?」











……こんなに怒るゆいを初めて見たから、オレは何も言えなかった。
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