short story

□会いたいのは君なんだ。
3ページ/10ページ





帰る途中、薮は何も言わずにただ歩いていた。




「…薮、ごめん…」
「あぁ? なんだよ」
「帰れって言われた時……素直に帰ってりゃよかった、のに…」
「…ま、しょーがねぇだろ。過ぎたことだし」
「ん……」
「ほら、もうすぐ着くぞ……あれ?」




薮が急に止まったから顔を上げると、俺ん家の前で誰かが倒れてた。

「ひ、光…あれ…ヤラカシ、かな…?」
「……いや、ちがうな…。ゆいだ」
「え? ゆいちゃん?」

薮から離れ、ヨタヨタしながら近付くとやっぱりゆいだった。

「こんなとこで何してんだよ…」
「大丈夫、なのか…?」
「…俺より…ヤバイんじゃね…っつーかこんなとこ居たら風邪ひくだろ……」

ゆいをおぶって家に入ろうとすると、薮が慌てて追い掛けてきた。

「お、お前何考えてんだよ!?」
「は? 何って……」
「どっちも風邪とか…マジくたばるぞ?」
「…大丈夫。俺段々元気になってきたし…」
「んなわけねぇだろ!」
「いいから仕事戻れよ…。あ、それとありがとな。ここまで来てくれて」
「いや、そんなのいいけど…」
「じゃ!」

そう言って家に入って、鍵を閉めた。
ドアの外ではまだ薮が何か言ってるけど、俺はそのまま部屋へと急いだ。


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ