long story

□Loved... 10
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それからあたしは病院へ何度も足を運んだ。
何度も何度も。
ほぼ毎日。

もう病院に行って大貴と話すのが日課になってた。
雨が酷かったり、やむを得ず面会時間を過ぎちゃったりで会えない日は何とも言えない虚しさが襲う。



今日もまた病院。
いつものように行くと、今日は移動式のお花茶屋さんが出てた。

無意識のうちに足はそっちに向かってた。

「…きれー」
「お見舞いですか?」
「あ、はい。いつもは果物とかお菓子とか買ってくんですけど…やっぱお見舞いって言ったら花ですよねぇ?」
「そうですねぇ…女性の方へですか?」
「や…男性、です」

店員さんは「そうだなぁ…」と呟きながら花を見回す。
そして色んな色の花が一緒になった花束を持ち出した。

「こちらなんていかがです? 1種類じゃないので飽きが来ないんですよ」
「へぇー! たしかに…なんかかわいい。…でもうざったがられないかなぁ…」

やっぱいつも通りお菓子とかのが無難な気がする…。

「いやぁー彼女さんからならなんでも喜ばれると思いますよー!」











彼女??















病室に向かうあたしの手には…



花束。

つい買ってしまった…。彼女って…慧が亡くなってから全然言われてなかったし。
いい響きだよねぇ、やっぱ。



「…って、あたしが好きなのは慧なんだってば!」


病院のロビーで、一人ごちた。
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