long story

□Loved... 10
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気に入ってくれるかなぁ…。
病室に向かう道中、あたしの頭のなかはそればっかりだった。



病室の前に着いてドアを開けようとした時、中から話し声が聞こえてきた。
反射的にドアに背を向ける。



「……うるっさいなぁ…」

大貴の声だ。
でも全然違う人みたい…。だってなんか、低くて怖い声してる…。

「うるさいじゃなくて…ゆいちゃん、そんなことしたって喜ばないと思うよ?」
「喜ぶとか喜ばないとかじゃねぇよ」
「じゃあなんで…」
「……」
「…大貴!」

しばらく、沈黙が続いた。

なんで…あたしの名前が?
あたしが…大貴とお母さんの仲を悪くさせてる…?

「……すんだよ…」
「え?」

大貴の泣きそうな声が聞こえてきて、ドクンと心臓が鳴ったのが分かった。

「オレが護んねぇでどーすんだよッ!!」




え……

どーゆー、こと…?



「伊野ちゃんが居なくなって…もうゆい護れんのオレしかいねーんだよ!」
「だからって…」
「こんな怪我でゆいのこと護れたんならオレは構わないよ。…母さんに言われなくたって、ゆいに心配かけたのはよく分かってる」
「……大貴…あの」
「もうほっとけよ頼むからさぁ!」



大貴……
ごめんね。

こんな風に思ってたなんて知らなかった。
涙が頬を伝ってるのが分かる。
悔し涙?
嬉し涙?
それとも…悲し涙?



なんか、もう、全部ごちゃごちゃになってる…。




その時病室の中からこっちに向かってくる足音が聞こえてきた。
急いで袖で涙を拭い取る。
深呼吸して、花束持ち直して、あたかも今来ましたって感じに装う。


ガラッとドアが開いた時お母さんと目が合った。

「あら、ゆいちゃん」
「…あっ、こんにちはっ!」

我ながら……下手くそな芝居…。

「毎日毎日ありがとうね。大変じゃない?」
「いえ、全然! 大貴…くんに元気もらってますから!」
「そう言ってもらえると助かるわ。…じゃあ、ゆっくり話してってやって」
「はい!」

お母さんとあたしは何回か頭を下げ合いながら、お互いに反対方向へと向かった。
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