long story

□Loved... 10
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病室に入ると、大貴は少し辛そうな横顔を見せていた。

……あたしまで落ち込んでちゃダメだもんね!
呼吸を整え、大貴に近づく。

「だーいきっ」
「…ゆい」

ホッとしたような顔に見えたけど…。

「大丈夫?」
「うん。大丈夫…え、何それ? 花?」

大貴は花束に目をやった。

「そーなの! ちょうど今日下で売っててさぁ。買っちゃった!」
「すっげぇなぁ…。ありがとう」
「うん! じゃ入れ換えるね」
「おー!」







「ゆい」
「んー?」

花瓶の花と交換してると、横から大貴の声がした。

「来週からリハビリするんだ」
「えっそうなの!? やったじゃん!!」
「…うん」

嬉しいはずなのに…なぜか大貴はあんまり浮かない顔してる。
そんな大貴の顔を覗き込んでみる。

「どしたの?」
「ん、なにが?」
「なんかあんま嬉しそうじゃないね」
「んーん、別に! すっげー嬉しいよ!?」
「…空元気なのなんてすぐ分かるんだからね」

ちょっと睨んでやると、大貴はショボンと俯いてしまった。

「だって……」
「なに?」
「………こんな事言ったら呆れられるっ!」

大貴の顔が見る見る赤く染まってく。

「え、なになに!? なんなの!? 気になる!!」
「やだやだやだやだ!! ぜってー言わねぇー!!」
「なんで!」
「は、はずいからに決まってんじゃん!」
「言わないなら明日からもう来ない!」

もちろん冗談だけど。
でも大貴は動きが止まって、すごいショックそうな顔をしてた。
効果音で言えばまさしく「ガーン」って感じの顔。

「……や、やだ…」
「じゃあ言ってよー!」
「いやだ!!」
「じゃあもう来ない!!」
「それもいやだッ!!」
「だからだったら言ってよ!」
「っだー! もー!! だからっ! 治ってきたらもうゆいこんなに来てくんないのかなって! 寂しくなったんだよ! そんだけっ!!」






…か…かわいい…。

「大貴…」
「…待ってマジでほんとにハズイんだけど」

どんどんどんどん大貴の顔が赤くなってくのが分かる。


慧が好きなのに……

そこには













大貴に惹かれてる自分がいた――。
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