short story

□Brother Beat
2ページ/9ページ



「あのね、変なの」
「へ、へぇー…変なんだ…」
「今日はお父さんもお母さんも朝から仕事だったでしょ?」
「あ、そ、そうだったんだー…ははっ。…そっかぁ…」
「お昼はまだプリンあったんだ。おやつに食べようと楽しみにしてたんだもん」
「……あーもう3時だぁー…おやつの時間…だなぁー…な、何食べよっかなー…」

逃げようとするお兄ちゃんをグイッと引っ張ると、床に倒れ込んだ。

「いてっ」
「ってことは、事件は12時から3時までの間に起こったってことでしょ?」
「…あのー…お、おやつ…」
「その3時間、家にいたのはあたしかお兄ちゃんだけだった」
「し、知らない間に食ったんじゃね…?」
「あたしが忘れたってこと!? あたしがボケだって!? お兄ちゃんのがよっぽど…」
「あ!! じゃあさ、じゃむかあんが食っちゃったんだ!」
「…お兄ちゃん」
「はい!」
「昨日から従兄弟のとこ行ってるじゃん」

お兄ちゃんは黙りこくって、チラチラとあたしの顔を見てきた。
これで逃げ道は全部失った。
あとは白状させるだけ!

「…お兄ちゃん、ホントに知らないんだよね?」
「え…」
「お兄ちゃんが知らないんならもう仕方ないもんね…あたしね、一瞬お兄ちゃんを疑っちゃったの…。ごめんなさい…最低だよね。いくら悲しかったからって何の罪もない大好きなお兄ちゃん疑うなんて…。やっぱりあたしが食べちゃったのかなぁ…」
「……ゆいっ!!」
「なぁに?」
「ごめんなさい! 俺が食べましたっ!」







――勝った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ