short story
□Brother Beat
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突然だけど、あたしのお兄ちゃん、伊野尾慧は芸能人です。
アイドルです。
ジャニーズです。
Hey!Say!JUMPです。
昔から弱くてトロくて、でも優しいお兄ちゃん。
そんなお兄ちゃんは今あたしの前で土下座中。
なんでって?
事の発端は15分前――。
「…ない…ないっ! なんで!?」
冷蔵庫の中をくまなく探しても、テーブルの上を凝視してみても、やっぱりない。
「ゆい? 何してんの?」
求めるものがなくて放心状態のあたしに声をかけてきたのが、お兄ちゃん。
「…ないの…」
「ん?」
「ないの!! なくなっちゃったの! あたしの大事な大事なプリン!!」
「へ? プリン?」
「知らない!? ねぇ! 知らないのかって聞いてるのっ!!」
その時、お兄ちゃんの目が泳いだのをあたしは見逃さなかった。
お兄ちゃんは飽くまで白を切るつもりらしく、「なんでだろうねー」とかなんとかモニャモニャとあやふやな返事をしてきた。
こいつ、絶対食べたな。
あたしは確信したのだ!!
照準をお兄ちゃんに合わせて、一気に追い詰めて白状させる攻撃にでることにした。