short story

□彼に夢中で
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帰り道。
まだまだ蝉がかなり鳴いてる。
その鳴き声が更に暑さを助長させてた。
まったくいい迷惑だよ…。

伊野尾とはどこまで運命なのか、帰路まで同じ。
実はお互い家を3軒挟んだとこに位置してる。

「あーもーダメだわぁ。数学死んじゃう」
「篠嵜って数学嫌いなんだっけ?」
「大っ嫌い!!」
「へぇー。知らなかった」
「えぇ、毎回そう言ってるじゃん!」
「…そうだっけ? あぁ、そうだそうだ」
「まぁた適当に受け流して…」

伊野尾は「まあまあ」とか言いながら笑ってる。






あんた知らないでしょ。









あたしがその笑顔どれだけ好きか。
胸が締め付けられるくらい好きなんだよ。




「ってかさ、数学分かんないなら教えようか」
「お、さっすがー! 教えて!」
「んじゃうち行こっか」
「え」
「ん?」
「……。や、なんでもない!! 行こ行こ」
「……?」

まだ少し不思議そうな顔をしてる伊野尾を引っ張って、うちまで行った。

今までならこんなにビックリすることじゃなかったのに…。
大丈夫、これまでだって何度もお互いのうちで勉強してきたんだし。


大丈夫、大丈夫……。
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