long story

□Loved... 11
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その時。








ドアが勢いよく開いた。

「大ちゃん、じゃあ……?」
「あ…と…」

女の子が出てきて目が合う。気まずい…。
多分、さっきの子だよね。
声がそうだもん。
えーーと…

「こ、こんにちはっ」

とりあえず挨拶っ!!
すると女の子はすごく人懐っこそうな笑顔で「こんにちは!」と言ってくれた。
かわいい…。
見たところあたしより2、3個下ってくらいかな?
中学生くらい、かな。


「おう、ゆい! 入れよ」

つい見とれてたあたしを見て、大貴が手招きしていた。

「あ、うん」

あたしが近くに行くと、大貴は嬉しそうにリンゴを差し出してきた。

「…え?」
「剥いてっ」
「リンゴ食べたいの?」
「うん」

こくん、と頷く大貴がどうしようもなく愛おしくなる。
今すぐにでも抱き着きたくなる衝動を抑えて、リンゴを受け取った。

そして包丁を出して剥こうとした時、人の影で明かりが遮られた。

「…?」
「あたしが剥くっ」

顔をあげるとそこにはさっきの女の子がいた。
少し頬を膨らましてる。

「なんだよ沙緒。お前戻るっつったじゃねーかよぉ」
「いーのっ」
「だって点滴は…?」
「大ちゃんのリンゴが先だもん」

大貴は困った顔であたしを見てる。

「あ、あの…沙緒、ちゃん?」
「え?」
「よかったら…はい」

あたしは沙緒ちゃんに包丁とリンゴを手渡した。
その瞬間、膨れっ面だった沙緒ちゃんの顔は一気に晴れやかになった。

あたしは沙緒ちゃんを見ながら、大貴のベッドの横にある椅子に座った。
かわいいな。大貴のために一生懸命なんだ。
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