short story
□手放したのは僕
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「……はぁ」
ため息がまた一つ。
これで何度目だろう。
床に寝転んで、天井見上げて、口半開きで…相当だらしないんだろうな。今の僕。
でも何もやる気が起きないんだよね。
いつからだっけ? こんなに毎日がつまんなくなったのって。
……あぁ…あの日からか。
あの、僕とゆいが別れた日――。
「…なんで? 侑李…」
「……」
「あたしが何かいけなかったかな…? あたしのこと、もう嫌いだった…?」
浮気。
僕には全く関係ない言葉だと思ってた。
だって、ずっとゆいを好きでいる自信があったから。
だけど……
原因は仕事だった。
声変わりが関係して全然上手く音取れないし、振りも間違えてばっか。
ゆいに話しても「頑張ってとしか言えない」で終わり。
分かってるよ。
ゆいはこの仕事したことないし、だから上手いこと言えないんだ、って。
でもある日スタジオの休憩所で会った女の子が驚くほど同じ気持ちだった。
高校3年生って言ってたその子は歌手やタレント活動をしてて、やっぱり僕と同じで上手く歌えなくなっちゃったみたい。
それからも何回かスタジオで会うようになって、僕がPV撮影で思いっ切りヘマした時、「よく分かるよ」って言ってくれた彼女に、キスをした。