long story

□Loved... 13
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その後、あたしは押し戻されるみたいに風を受けて、気がつくと部屋で寝転がってた。





物が散乱してたはずの部屋は何事もなかったかのように綺麗に整頓されてた。

「あれ…?」

起き上がろうとした時、後頭部が痛んだ。

「いっ……!!!」

そっか…。写真立てが当たって…。

ふと床を見ると、整頓された部屋の中で一つだけ、不自然に写真立てが転がってた。
中にはあの写真。
慧とあたしが笑ってるあの写真が入ってる。

また泣きそうになったけど、こらえた。

「……大好きだった、かぁ…」

つぶやくように言って写真立てを拾う。
不思議と穏やかな気持ちだった。

中の写真を抜いて、押し入れにしまってあるアルバムに挟んだ。

写真立ての中は、もう何も入ってない。



「……幸せになるんだもん。約束したんだ」

誰に言うわけでもなく、一人で拳を握りしめた。


大貴に会いに行こう。
リンゴとかメロンとか、フルーツもお菓子も花も、たくさん買って行こう。

気持ちが躍る。
慧がいなくなってから、初めてこんなに軽くなった。
久しぶりにこんなにウキウキする。



足取り軽やかに、大貴の病院に向かった。


 
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