long story

□Loved... 14
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病室のドアを静かに開ける。
恐る恐る覗いてみると……





大貴の姿はなかった。


「あれ?」

どうしたんだろう。
まぁこれで気兼ねなく荷物持って行けるけど…。


ふとベッドに目を向ける。
ベッド脇のチェストの上には、少し色の変わったリンゴが入ったお皿が置いてあった。

自分勝手で……ごめん、大貴。



荷物を持ってそそくさと出ようとした。













その時。








病室から出ようとした瞬間、何かにぶつかった。


「いたっ!」
「何も言わずに出てくの?」


聞き慣れた声に顔を上げると、大貴がニヤリと笑ってた。

「だっ、だだだだ大貴!?」
「あれはさ、オレどう受け取ればいい?」
「あ、あれって?」
「忘れた、とか言わせねーかんな」

とぼけんな、ってことか…。
そりゃそうだよね。

「……」
「ゆい」
「あれは……」










今更好きって言ったって……
大貴は好きじゃないかもしれない。
あたしのこと、もう好きとかそういうことじゃなくなってるかもしれない。


こわい……。
口に出すのが、こわい。





「ゆい。正直に、そのままの気持ち言ってくれればいいから」
「……っ…」



大貴の優しさに、身勝手な自分に、もっと早くにって後悔に、涙が溢れた。

 
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