short story![](http://id17.fm-p.jp/data/104/yuinovel/pri/91.gif)
□オルトロスの犬
2ページ/7ページ
やがて見えてきた201の扉の前で立ち止まる。
ここに奴が居るんだ。
そう思うと、銃を持つ手に自然と力が込もる。
静かに扉に手を掛けた。
これまでの慎重さが嘘だったかのように大胆に扉を開け放つ。
バン、という音と共に、奥で動く人影を視界に捕らえた。
「熊切ぃ!!」
奥に走って銃を構えた。
そこには、これまでの彼からは想像出来ない弱々しい姿があった。
ベッドの上でうずくまり、立ち上がろうとするもすぐに崩れ落ちる。呼吸も荒い。
近付くと肌に赤い湿疹も出来ていた。
「熊切…」
「来るなッ!!」
ぜいぜいと息を肺から絞り出す。
無意識のうちに、ゆいは銃を下ろしていた。
「肩に捕まって」
熊切の前にしゃがみ込む。
ナイフを持っているかもしれない。
銃で撃たれるかもしれない。
だが、そんなことはどうでも良かった。
ただ助けたい。そう思った。