short story

□オルトロスの犬
2ページ/7ページ






やがて見えてきた201の扉の前で立ち止まる。

ここに奴が居るんだ。
そう思うと、銃を持つ手に自然と力が込もる。
静かに扉に手を掛けた。





これまでの慎重さが嘘だったかのように大胆に扉を開け放つ。
バン、という音と共に、奥で動く人影を視界に捕らえた。


「熊切ぃ!!」


奥に走って銃を構えた。









そこには、これまでの彼からは想像出来ない弱々しい姿があった。

ベッドの上でうずくまり、立ち上がろうとするもすぐに崩れ落ちる。呼吸も荒い。

近付くと肌に赤い湿疹も出来ていた。


「熊切…」
「来るなッ!!」

ぜいぜいと息を肺から絞り出す。
無意識のうちに、ゆいは銃を下ろしていた。

「肩に捕まって」

熊切の前にしゃがみ込む。
ナイフを持っているかもしれない。
銃で撃たれるかもしれない。

だが、そんなことはどうでも良かった。

ただ助けたい。そう思った。


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ