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□セツナ編
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果てしない昔のこと。
寄り添い共に孤独を温めていた嘗ての彼等は俺のこの血を求めた。俺はそれに答えたときもあったしそうじゃないときもあった。
けれど今は、そんな世ではないのだ。
期待していた奏という異端は、人間という枠からははみだしていなかった。

欲しいのは自分と同じバケモノだ。
自分と同じ時を生きている嘗ての彼等のような存在が、いないのだと叩きつけられた。期待していたから、いつものことだとは割り切れなかった。


人間ごっこをする決心はまだ俺にはない、悪あがきをするしか、俺の空虚に目を背けることは出来なかった。
俺は人間のフリを放棄した、陵太朗はそんな俺に何も言わないし奏は壊れた顔で笑う。永とは会わないようにしたし、雅はこんな俺に怒っているようだ。


俺は一条桜を置いて、本来の姿で街の闇に姿を置いた。
嘗て呼ばれた本当だったはずの呼び名は、今は誰も知らないものになった。
もっとも俺自身ももうファーストネームまでしか記憶に留めていないが。
多分、どこかのそういう書物には俺の名があるのだろう。
俺はそういうバケモノだから。


街をこうして歩いているのはなんとも懐かしいことだ。こんな街並みとは程遠かったけれど治安の悪さは今歩いているこの区域と同じくらいだろう。


不良の団体が喧嘩をしている。
同じくらいの人数だが片方のチームの動きが鈍かった注視してみれば、人質を取られて上手く動けないよう。

彼等の仲間なのだろう、捕まっている子は泣きそうな顔をして苦戦する仲間たちをみている。


《セツナって私が道端に倒れていたらどうするの?》
《なんです、その有り得ない状況、貴女がどうやったらそんなことになるんですか。》
《その美しい顔に悲壮くらいは浮かばせてくれるなら、この世も腐ったもんじゃないかもしれないわ。ただそれだけよ、セツナ。》


嘗ての戯れなんて、今はなんの形にも残っていないのだから、


「この世は、腐ったものですよシフォン様。」


俺は人だかりの中に踏み込んだ。
特に意味なんて持たないままに、ただ忘れたかったから。


 
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