「やっぱり、もう少し休んだ方がいいんじゃないか?」 玄関で靴を履くカガリに、背中越しに声を掛ける。 不安そうに声を掛けてくるアスランに、振り返ると柔らかく微笑むカガリは口を開いた。 「大丈夫。…それに、もう遅くなるし、…心配するから」 既に陽は翳り、暗闇が支配する夜の世界へ変わろうとしている時刻。 …『心配する』のは、勿論、一緒に暮らしている、兄。 以前から『遅くなる』と伝えた事については、あまり咎められないが、突然そう告げると機嫌が悪くなり許可をくれないのだ。 …正確に言えば、拗ねる…と、言うのだろうか。 滅多な事で怒ったりしない兄だが、大切な妹に関する事には、そういう意味で、ある意味厳しい。 「身体、…その、…辛く、ない?」 済まなそうに、窺うよう言葉を紡ぐアスラン。 その言葉に、きゅっと唇を噛むと、頬を染めて恥ずかしそうにしながら、軽く握った左手で口許を隠し、瞳を瞬かせながら俯くカガリは、小さくこくんと頷いた。 The one -Scene.After time.- |