立ち去ろうとした相手が絡まった視線をカガリの制服に落とす。 「…一応、女だという自覚は、した方がいいんじゃないのか?」 「…へっ…」 見惚れてしまっていたカガリは間抜けた声を上げてしまう。 「そんな格好してるから、あんなのが寄ってくるんだよ」 「そっ、そんなの、仕方ないじゃないかぁっ!雨なんて自然現象だっ!」 呆れたように、やれやれと肩を竦ませる相手をキッと睨み付け反論するカガリ。 「…まぁ、それもそうだけど…」 言いながら瞳を細め観察するように見つめられ、ムッとしながら躯を横に逸らし腕で胸元を隠すと、相手はクスクスと笑いだす。 「なっ、なんだよっ!」 「…いや、失礼。 ただ…、あんまり色気のない下着だと思って…。さっきの男は何故……、っと」 「…ッ!!」 本音を漏らされ、握った拳を震わせるカガリ。 それに気が付いた相手は、慌てて口元を押さえる。 「ま、あまり気にするな。 まだ高校生なんだし、これから成長もするだろうからさ」 言い切るとニッコリと笑う相手に反し、瞳を瞬かせ言葉の意味を理解しようと必死なカガリ。 「じゃあ、俺は急いでいるから」 そして、カガリの肩を軽く叩き、言うだけ言って足早に去って行く相手を呆然と見送ってしまった。 確かに、スポーツブラだ。 でもそれは、 動きやすいからで… 『色気』なんて、 求めて身に付けてない。 しかも、<まだ> 『成長もするだろうから』 ……って… 遠回し…じゃなくても、 『胸がない』って… …言われてる…、よな? なんで身も知らずの相手にそんな事をいちいち言われなくちゃならないんだ? 背が高くてスタイルと顔が少しくらい良いからって…見とれた自分が恥ずかしくて情けないっ!! ヤな奴っ ヤな奴っ!! ヤな奴ぅ〜〜っっ!! 「ばっかやろぉ〜〜ッ!」 今はいないその相手を思い出し、カガリは空に向かって怒鳴り付けた。 |