カガリの席は教室の一番後ろで、しかも窓際の超特等席だ。 風が心地よく吹いてくる。 「じゃあ、次の問いを…、……ユラ」 呼ばれたにも関わらず、頬杖を突いて窓から校庭を眺めていたカガリは気が付かない。 「ユラ?」 再度呼んでも答えない生徒を見て溜息を吐きながら、人差し指で眼鏡のフレームの位置を戻す教師。 「カガリってば、指されてるよ!」 前の席の友達が机を叩いてやっと我に返るカガリ。 その時は既に、担当教師が目の前にやって来ていた。 「す、すみませんっ!」 慌てて席を立ち上がる。 「今は何の時間だ?」 「か、化学の…、授業中…です…」 カガリの机に両手を付いて屈むような姿勢で下から見上げるようにする教師にカガリは息を呑みながら答えた。 「…判っているならよろしい。…では、昼休みに化学準備室に来なさい」 「…………はい」 仕方ないが、小さな声で渋々答える。 返答を確認した教師が真っ白な白衣を翻しながら教卓へと戻って行くと、カガリははぁっと溜息を吐いた。 その授業が終わった後、友達はカガリの呼び出しネタで話が弾んでいた。 「よっカガリ!!先生の呼び出し食らっちゃってぇ…」 「でもさ、あの先生って若いのに何かキッチリしてるってゆーか」 「すごく長いって訳でもないのに髪もキッチリ後ろで結んでてさぁ…いかにも真面目そうなメガネといい、融通利かなそうな雰囲気だよね〜」 「そうそう、お堅い雰囲気あるよねぇ…ちょっと近寄りにくいってカンジ」 「カガリ大丈夫〜? とりあえず、はいはいって聞いて、さっさと切り上げて来なよ?」 カガリはそれを聞きながら、ただ憂欝な表情を浮かべ溜息を吐いた。 |