カガリは授業に遅刻した罰として、放課後に体育倉庫の清掃兼整理をする事になってしまった。 けれど、何故かそこに、フレイも付き合う形でいたのだ。 「ちょっ、もうイヤ!!何よこれ、埃だらけじゃないのよっ」 上の方の棚にあった箱を取り出したフレイがそう愚痴を零しながら、辺りに舞っている埃を両手で掃っている。 「だから、いいって。フレイは遅刻してないんだしさ」 「だって、責任感じるじゃない。まさか、とは思ったけど……、ねぇ」 振り向いたカガリの視界に映ったのは、期待をしたように瞳を輝かせるフレイ。 「な、なんだよ…」 思わず、腰が引けてしまう。心なしか、声も上擦っていた気がする。 「で、誰なのよ??」 「だ、誰って…、」 覗き込むように、近付いてくる興味津々な相手に後退るも、直ぐに壁際に追い詰められてしまった。 「だって、男っ気なんて全くなかったカガリが急に女の子らしくなって…。 この間私が付き合わせた買い物の時だってそうよ。今まで全く興味を示さなかった可愛い下着を買ってたり…」 「そんなっ…か、関係ないってばッ!!」 「もうッ、私にはバレたんだし、教えてくれたっていいじゃない」 「いや…えっと…」 どこまでなら話しても良いだろうか…?? そんな事考える余裕なんて、今は、ない。 「…クラスの男のコは、違うわよね…そんな雰囲気ないし。…じゃあ…」 黙ってしまった自分を余所に、独りで考え始めたフレイ。 そういう勘には鋭い彼女のことだ、もしも、言い当てられたら、うまく誤魔化す事も、言い逃れも、きっと出来やしない。 「…きっ…キラの、とも、だち…なんだ…。実は…さ」 咄嗟に口から出た言葉だった。 …間違ってはいない。 「うっわ〜、そんなオトナと付き合ってるんだ…」 瞳を丸くさせて感心したように声を上げるフレイに、カガリは敏感に反応した。 「…やっぱり、変…かな…?」 不安気に俯いてしまったカガリに気が付いたフレイは、年の差を気にしていたのかと訂正するように慌てて声を掛ける。 「そんな事無いってば!…もう違うわよ。 私ね、カガリが付き合うのは、同じ様にはしゃげる同年代くらいかなぁって勝手に考えてたから…」 そこまで口にしたフレイは、ここが体育倉庫で、今は二人きりだというのを改めて確認する為に、辺りを見回すと、その先を告げた。 「ねぇ、ホントにココだけの話、どうだったの?…ハジメテ、大丈夫だった?」 「…っっ!!」 そういう事に関して言えば、生まれたばかりの子供の様なカガリ。 身体の事も、心配だけれど、その時どんな態度を取ったかによって、いくら年上の相手だとしても、傷つける事があるかもしれない。 その『彼』が、カガリの恋愛経験がほぼ皆無だという事を理解しているのかどうか、判らないのだから。 せっかく訪れた幸せを、些細なすれ違いで壊して欲しくない。 そう思う彼女なりに、カガリを心配している発言なのだけれど、当の本人は視線を逸らし、恥ずかしそうに狼狽えていた。 |