「だ、大丈夫…って…言われても…」 狼狽えているカガリの声は、恥ずかしさも相俟って震えていた。 「身体、平気?辛くない?」 「…今は、何ともない、けど…」 「そっか、じゃあ、幸せ?」 優しい微笑みのフレイにカガリは恥ずかしそうに俯いてしまう。 「ねぇ、カガリ?」 「…うん」 答えを促されて、握った手を口許に当てて、消え入りそうな程の声で小さく頷く。 「…なぁ、フレイ。 …あのさ……、 や、やっぱりいいや」 言いかけて、首をブンブンと左右に振るカガリの腕を、フレイは肘で軽く小突いた。 「ちょっと、ナニよ〜、気になるじゃないの」 「いや、…えっと…」 「ん?」 「や、やっぱりさ、 …アノ時って、…、っ、い、痛い、もの、なのか…?」 顔は俯いたまま、視線だけを向けて窺うようにしているカガリの顔は、今まで見たことも無いくらいに真っ赤で。 対するフレイも、まさかカガリがそんなことを聞いてくるなんて思っていなかったので、一瞬だけ瞳を丸くして固まってしまう。 けれど、直ぐに肩を竦めて微笑んだ。 「そうね…人それぞれみたいだけど、ハジメテの時って、普通は痛いものらしいわよ? 中には全然痛くないっていう人もいるみたいだけど… …でも私も、ハジメテはカガリと同じように痛かったわよ?」 「…そっか…」 答えを聞いて、安心したように息を吐いたカガリ。 フレイは俯いたままの所為で、未だに自分の目の前にある金色の髪を優しく梳く。 恋って、こんなにも人を変えるものなのね…と、フレイは出会った頃のカガリを思い返した。 本当は、カガリがこんなにも女の子らしいなんて、きっと、誰も思わなかっただろう。 そんなカガリを引き出した、その『彼』に、フレイはほんの少し興味が湧いた。 お節介だとは思うけれど、親友として「カガリをよろしく」と、言いたくなったのだ。 「大丈夫、痛いのなんか最初だけ。 …そのうち気持ちよくなってくるわよ」 「フ、フレイっ!!」 髪を梳くその手は優しいけれど、クスクスと楽しそうに笑うフレイに、何となく悔しい気持ちになり頬を膨らして睨んでいるカガリがいた。 ―End― |