***** 2週間後、カガリはある生徒の家の前に来て、一度溜息を吐く。 息をゆっくりと吸い直すと、意を決しインターホンを押そうとした。 …瞬間、目の前の玄関のドアが開いた。 「時間通りですね、カガリ先生」 待ってました、とでも言うように満面の笑みを浮かべた生徒。 「…アスラン、お前なぁ…」 先程から、何度零したか判らない溜息混じりの声で呟くと、ガックリと肩を落とす。 「やっぱり、カガリ先生に教えて貰わないと、判らなくて」 笑ったまま、可愛らしく首を傾げる仕草にカガリは眩暈がするような気がした。 ―――この、確信犯。 先日、カガリが自ら辞めることを申し入れた次の週に、アスランの学校では模試が行われていたのだが。 彼は、その答案用紙を白紙で提出したのだ。 一度トップの位置についた者は「一番で在り続けること」を目標に勉学に励むの通常だ。 その中でも、とりわけ学校側からも期待のかかった生徒の起こした前代未聞ともいえるその行為に、担任教師が両親に連絡したのだ。 そして、彼曰く… 「信頼していた家庭教師の先生が、いなくなってしまって、不安になって…」 と、弱気な態度を見せられてしまっては、その願いを聞き入れる他ない。 是非、「優秀な」カガリ先生に再度お願いしたい…という。 |