「明けましておめでとう。アイリ、レオン」 「……」 ―――年が明けて、最初の挨拶だよ。 そう教えていたにも関わらず、子供たちは浮かない顔をしたように唇を噛み締め、お互いの小さな手を握り合ったまま、リビングのドアに佇んだまま中に入ってこようとしない。 「…どうした?」 アスランが近寄って跪き、二人の頭を撫でてやる。 「ぱぱ…。 ままはね、きょうもおしごとなの…?」 俯き加減にアイリが口を開いた。 未だにリビングにいないカガリを思い、淋しくなったのだろうか。 「…いや、今日はお休みだから、ゆっくり寝かせてあげているんだよ」 「どうして、おでかけしないの…?」 アスランの答えに、レオンは拗ねたようだった。 「え…?」 「だって、きのうのよる、ままがないてたよ…」 「ぱぱとままのおへやから、きこえてきたもん…」 次々と子供たちにそう告げられて、アスランは記憶を辿ってみる…が、昨夜はずっと隣にいたカガリが、泣いていた形跡などなかった。 今朝だって、穏やかに眠るカガリを起こしたくなくて… 「だって、まま、『いきたい』ってないてた…」 「―――ッ!」 最後にアイリが口にした、その言葉の意味を瞬時に理解したアスランは、昨夜の甘く熱いひとときを思い出す。 オフの少ないカガリに、いつもは気を遣っていたその行為も、次の日は一日中休めると判っているから、散々焦らして、求めさせて… 自らの想いをその行為で証明するべく、そういう意味で、容赦なく攻め立てた… まさか、子供たちが起きてしまう程だったなんて…と少し苦笑してしまう。 あの瞬間、アスラン自身には、身を焦がすように甘く響く声が、子供たちには泣いているように聞こえるのか…と、その辺りは妙に納得して。 「ねぇ、ぱぱ。ままはどこにつれてってほしいの?」 レオンの問い掛けに、アスランは微笑むと、二人の子供を同時にその腕に抱き抱える。 「天国のような場所…かな。 幸せな気分になれる所だよ」 間違ってはいないぞ、と独り納得するアスランのその言葉に、アイリとレオンは人差し指を唇に当て、首を傾げて一生懸命考えている。 「ん〜と……、…ゆーえんち!!」 「ぼくも〜」 「じゃあ、次の休みには、みんなで出掛けよう」 漸く、ぱぁっと花が咲いたように瞳を輝かせて笑う子供たち。 フッと笑うアスランが、二人をソファに下ろし、暫くアイリとレオンの頭や頬を撫でていたアスランが口を開く。 「そろそろカガリを起こしてくるよ。 ちゃんと挨拶するんだぞ?」 「「はぁい!!」」 −End− |