―――カガリ先生、 俺とデートして? 生徒の筈のその少年は、教師である女性を前に、楽しそうに笑って見せた… 毎週土曜日、 それは、 先生が俺に会いに来てくれる唯一の日… Lesson.2 「Wish...」 「カガリ先生。予習も復習も総て終わりました」 アスランの家に到着して、未だ10分も経たないうちに言われた一言にカガリは溜息しか出なくなる。 「…そう、みたいだな」 「ちなみに、解らない箇所はありません」 「…だろうな」 ココ最近、ずっと。 アスランは自分が訪問する前に、ほぼ完璧に何もかもを終わらせているのだ。 元々教えることの少なかった生徒で、本来それは喜ぶべきことなのだろうけれど、カガリは複雑な気持ちになる。 こんな態度になったのは、『あの日』以来なのだから… 「あ、カガリ先生。 新製品のお菓子買ってきたんだ。はい」 どこか楽しそうに微笑みながらお菓子のパッケージを差し出すアスランを、つい先日までお菓子という類のものを殆ど口にしたことがなかったなどと、誰も想像も出来ないだろう。 「…カガリ先生?」 「…あ、あぁ。あり、がとう…」 半ば上の空状態のまま差し出されたそれを受け取るカガリ。 そんな気持ちを知る由もないアスランは首を傾げて、どうしたんですか?と顔を覗き込む。 いきなり至近距離で見つめられ、カガリは慌てて視線を逸らし、一息吐く。 こんな風に態度が変わって約一ヶ月になるアスランの様子に、カガリは重い口を開いた。 |