「アスラン」 「何ですか?」 「…今日で、私がアスランの家庭教師に来るのは…終わりになると思う」 そう言い放った途端、楽しそうに笑っていたアスランの表情が曇る。 「そんな事、聞いてない」 睨むような視線を投げ掛け、淡々と声を響かせると唇を噛む。 「今、はじめて言ったんだよ。アスランは家庭教師なんかいなくても、勉強が出来るから…」 アスランのそんな態度を身構えていたとはいえ、用意してきた言葉が詰まる。 「…だから?」 促され、言い淀んでいたカガリは、息を呑んでその続きを告げる。 「…会社の方から、家庭教師は必要ないという見解を、ご両親に連絡をして貰うように…」 「ッ、どうしてそんな…っ」 慌てたように声を荒げるアスランを、カガリは困ったように見つめる。 「アスラン。…私が派遣されるのには、授業料が掛かるって知っているだろう? …私は、それだけの事をしていないんだ。そんな余計な費用を、ご両親に負担させているんだ。…判るだろ?」 生真面目なカガリは、自分が働いた分の、それ相応の代価に見合わない、と判断したのだ。 そして… 彼が、自分に少なからず『好意がある』ということ。 それが、どんな『好意』なのかは未だ把握できてはいない。 だがもし、彼のそれが本当の恋愛感情に発展した場合。 自分には付き合っている相手がいるのだから、応えることは出来ない。 偉そうに語れるほど、そこまで年齢は離れていないけれど、難しい年頃、だと思う。 こちらにはそんな気がなくても、期待をさせてしまうような態度に捉えられてしまっているのかもしれない。 …だから、傍にいない方がいい。 |