番外編

□雪見猫
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窓の外は雪でした。
はらはらと、周囲の音を吸い込みながら舞い降りて来ます。北国とは違い水分の多いそれは、明日の昼までには解けて消えてしまうように思われました。

「雪が、好きなのかい?」

一心に舞う雪を眺めていると、不意に主様に声をかけられました。
主様は背の高い人間の女性で、高くもなく、低くもない、耳に心地いい声をしております。
ボクは返事をする代わりに、一度ゆっくりとシッポを揺らしました。

「ふふ、そうか。…珍しいね。君のお友達は、普通は雪が嫌いなのではないかな?」

そう、ボクの友達は皆、雪が嫌いでした。寒いし冷たいし、何故あんな物が好きなのかと、よく問われもしました。

でも、どうして皆雪が嫌いなのか、ボクにはそちらの方が分かりません。
ボクだって、寒いのも冷たいのも嫌いですけれど。

でも、地面が真っ白くて
きらきらしていて
花びらみたいに、はらはらと空から落ちてくる。
あんなに……あんなに、綺麗なのに。

どうして皆嫌いなのでしょう?
一緒に見れないのは、寂しいです。
同じものを綺麗だと語りあえないのは、悲しいです。

いつの間にかぺったりと耳の垂れてしまったボクの頭を、主様は優しくなでてくれました。暖かい体温に、ボクは無意識に主様の手に擦り寄っていました。

「私と一緒では不満かな?」

優しい言葉と手が嬉しくて、ボクは少し泣きそうになってしまいました。



主様

優しい、優しい主様

あなたとボクでは、言葉は通じないけれど

見える景色は必ずしも、同じものではないけれど

それでもずっと、そばにいたいです。



主様、



…………大好きです。




それからボクと主様は、舞い落ちる雪を

ただただ、一緒に眺めたのでした。





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