ギアス文
□契約の証
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これは、契約。
「神聖ブリタニア帝国皇帝陛下、御入来!」
その声と共に、壇上に軽い足音が響く。
集められた皇族達が音につられる様にして視線を向けると、ゆったりとした歩調で歩いて来たのは、見慣れた白い巻き毛の老齢の男ではなかった。
艶やかな漆黒の髪と紫電の瞳、すっと通った鼻筋に薄い唇の、恐ろしく綺麗な顔立ちの少年だった。細身の体は黒の詰襟タイプの学生服に包まれている。
周りの皇族達の困惑と疑心に満ちた視線を浴びながらも、少年は眉筋ひとつ動かす事無く、玉座に向かって悠然と歩みを進めている。堂々と、優雅に。その姿は少年の美しい容姿と相俟って、見るもの全てに何処かうそ寒いものを感じさせた。
美しすぎるものは、時としてヒトに恐怖を抱かせる。
まさに、それだろうか。
少年は玉座に悠然と腰掛、ほっそりとした長い脚を組んだ。誰何の声に、少年の低く、それでいてよく通る声が答えた。
「私が第99代ブリタニア帝国皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです」
「第98代皇帝、シャルル・ジ・ブリタニアは私が殺した。よって、次の皇帝には私がなる」
ザワリ、と空気が揺れた。クリスティーナの怒声が響く。
「あの痴れ者を排除しなさい! 皇帝陛下を失脚させた大罪人です!!」
命ぜられ、近衛兵が槍をもって突きかかる。が、その動きは天井から飛び降りて来た一人の少年によって遮られた。槍を砕き、近衛兵達を吹っ飛ばしたその少年は着地した姿勢からゆっくりと立ち上がると、僅かに横に移動し、ルルーシュを守る様に立った。
「紹介しよう、我が騎士枢木スザクです。彼にはラウンズを超えるラウンズとして、『ナイト・オブ・ゼロ』の称号を与える」
再び、謁見の間の空気が、困惑と怒りに震えた。
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