ギアス文
□ただ願うのは
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final turn視聴後妄想。ルルーシュ追悼文。カレ→ルル風味。カレン独白。
矛盾など多々ありますが、大丈夫な方のみお進み下さい。
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視界の端を、懐かしい漆黒と憎たらしい黄緑がよぎった気がして、カレンは思わず足を止めて振り返った。
ただ願うのは
あの戦いの日々から、もう五年が過ぎた。
まだ小さな小競り合いは絶えなくて、世界は平和になったとは言い切れないけれど。それでも復興は少しずつ進んで、みんなの暮らしはずっと良くなって、笑っていられる時間は沢山増えて。
みんなが幸せだって、笑っているのに。
それを一番見たかったはずのあなたが、
ルルーシュが、いない。
だってこれは、
全部あなたがくれた未来。悪虐皇帝の汚名を着て、その命を犠牲にしてまで。
見たくなかった筈がない。世界は彼の望んだ方へと着実に向かっているのだから。
誰よりも平和を、人々の幸せを願っていたのは、あなたなのだから。
なのに、それなのに
その事実を知る人はごく僅か。
あなたが、そう望んだから。
酷いひと。
汚名を晴らす事さえ、許してもくれない。
あなたの為に泣く事さえも、許してくれない。
本当は、あの日。
ルルーシュが『ゼロ』に…いえ、スザクに殺された日。
直ぐさま駆け寄って、抱き締めて、何馬鹿な事してんの!? って怒鳴りつけて、それから……ありがとうとごめんなさいを言って……あなたの為に泣いてあげたかった。あなたを大切に思う人が、あなたの死を悲しむ人が、悼む人がいることを教えてやりたかった。
けれど、それはあなたの意思に反する事。
みんなそんなこと出来るはず無いって、あなた知ってたんでしょう? 分かっていてやったんでしょう?
……やっぱりあなたは、酷いひとね。
酷くて、優しいひと。
望んだのは安息の未来。
願ったのは世界の平和。人々の幸せ。
その中に『自分自身』を入れる事は、決してなかった。その資格が自分には無いのだというように。
あなたを愛するひとが、あなたを大切に思う人が、どんな思いをするのか、考えもせずに。
ナナリーちゃんをあんなに泣かせて。
会長も、リヴァルも……みんなを泣かせて。
あなたの命を犠牲にして得られた平和なんて、嬉しい訳がないじゃない。
そんなことにも、気付かないなんて……馬鹿なひと。
いえ、………もしかして、気付いてた?
気付いていて、だからわざと嫌われようと、遠ざけようとしていたの?
………どっちにしたって馬鹿よ。大馬鹿よ。
あなたの思惑に、みんなが気付かないとでも思っていたの?
……ふざけないで。
あなたを大好きだったみんなの事、少しは信用しなさいよ。
気付かない訳ないじゃない。私達は、あなたが本当は優しいひとだって、知っていたんだから。
…ああけれど、そうは言っても、私達は最後の最期になるまで、誰一人としてあなたの思惑に気付けなかった。
だから消えてしまったの? 私達を置いて。いなくなってしまったの?
……………酷いひとね。
本当に、酷いひと。
結局私達は、最後まであなたの手の上で踊らされていた。
でも、そんなあなたの事だから、
もしかしたら、あなたは誰にも告げず、何処かでこっそり生きているのではないかと、淡い期待を抱いていたこともあったけれど。
例えば街の雑踏を歩く時、無意識にあなたの姿を探した事もあったけれど。
いつしかそれも止めてしまった。
こんな風にして、いつかあなたの事を忘れてしまうのだろうか。
今のこの世界があるのは、あなたのおかげだということも。
それでいいと、あなたは言うのかも知れない。
……だけど。
不意に、暮れなずむ夕日の中、見慣れた街の雑踏の中で、視界の端を、懐かしい漆黒と憎たらしい黄緑がよぎった気がして、カレンは思わず足を止めて振り返った。
…けれどそこに求めた人影は無く。
見間違いかも知れない。
でも……
………だけど…
カレンはふわりと一つ微笑んで、再び前を向いて歩き出した。
あなたの分まで生きようと、決めていた。決めていた、けれど。
ホントはずっとあなたに逢いたかった。二度と逢えないと思っていたから尚更に。
でも、今は…
ねぇ、ルルーシュ。
いつかあなたに追いつくから、
だから、
その日まで………
ただ願うのはあなたの幸せ
end